『おきざり』byえふしぃ


テーマ「擬人化」2007年新入生歓迎号

 私はいつも置いていかれた。玄関の片隅のあの場所で、たくさんの子がいる中で、選ばれるのはいつも私じゃない子だった。特に新しい子はよく選ばれて、一緒に出かけていく。帰ってくると嬉しそうに今日はどこへ行ったとか、何をしたとか、そんな話をしてくれるけど、私はちっとも嬉しくないし楽しくもない。でも、そういう子は何故だかすぐに居なくなった。
 時々私が連れて行ってもらえたときも、ほかの子みたいに遠くへは連れて行ってもらえない。そして帰ってきたらまたあの玄関の片隅に戻される。新しく来た子には「どこへ行ってきたの?」って聞かれるけど、私が近所にしか連れて行ってもらえないことを知っている子たちにはもう聞かれない。私の答えはいつも「ちょっとそこまで」だから。悲しいとか、羨ましいとか、さびしいとか、そういう感情はないけど、でも何故とは思った。どうして私だけって。結局それも悲しいとかっていう感情だって気づいてからは、本当にもう何も考えなくなった。新しく来る子は皆新しくて、きっと新しい方がいいんだなって納得してた。
 でも、そうじゃなかった。今なら言える。
 初めて連れてきてもらった近所じゃない場所で、私はずっと、ずーっと待たされた。近所のときはいつも一緒に居るのに、今日だけは違って。気がついたら、全然知らない人に連れて行かれてた。
あぁそうだったんだって、そのとき気づいた。私が居なくならないように、誰かに連れて行かれないように、いつも持ち歩ける場所にしか連れて行ってもらえなかったんだ、って。自意識過剰かもしれないけど、今思い出すと新しい子たちはどんどん居なくなっていってたし、あながち間違ってない気がする。
そんなに大事にしてくれてたんだって思ったら、こんな知らない人に連れて行かれるのが悔しくて。でも、私は連れていかれることしかできない。だから私は羽ばたいてみた。精一杯の風を受けて逃げ出そうとした。知らない人の体は大きく傾いて、バランスを崩した拍子に投げ出された私は壊れてしまった。私はもう使えないけど、知らない人に使い続けられるよりはマシ。その人も壊れてると、いいな。人間は壊れるって言わないんだっけ?

傘の盗難にご注意下さい。今回は擬人化がテーマということでした。文章隊が一番やりやすかったんじゃないかなぁと思いながら部誌を見たら文章2つしかなかった\(^o^)/
次回も頑張ります。そろそろ一人称を卒業したいなぁ。何か書くかなぁ。